現在NHKで放映されている朝ドラ「とと姉ちゃん」。主人公はご存知のように
『暮しの手帖』の創業者、大橋鎭子さんをモデルとしています。
ドラマは編集長に花森安治さんを迎え、創刊号を出版したところまで進み、
いよいよ佳境に突入。毎朝楽しみに観ている人も多いのではないでしょうか。
森本さんが20代後半の頃、ふたりでこんな話をしたことがあります。
「これまでたくさん雑誌の仕事をしてきたけれど、まだ仕事をしたことがない雑誌で、
到達点として1冊名前を挙げるとしたらどれか」
答えは二人揃って『暮しの手帖』でした。
広告を一切入れないからクライアントにおもねることもない。
指針はガンとしてぶれず、シンプルでいて美しい。
「電気釜の炊き比べ」などといった実名を出しての商品テストができたのは、
世界広しといえども『暮しの手帖』だけだと思います。
だから森本さんが初めて同誌から仕事の依頼を受けた時は、本当に嬉しそうでした。
トビラを開き、まずあるのが花森さんの言葉。
そのつぎの目次ページに、森本さんのカットが使われることになったのです。
連載だったのか単発だったのか、そのあたりはよく覚えていませんが、
筆のイラストではなく、布を使ったコラージュでした。
よほど嬉しかったのか、それとも私を編集部に紹介しようと思ってくれたのか、
森本さんに誘われて、一度『暮しの手帖社』を訪ねたことがあります。
コンクリートの打ちっぱなし、テラスハウスのような外観。日よけに
大きな布のシェードが使われていて、とても会社とは思えない素敵な出版社。
居心地の良い空間で、当時編集長だった高野容子さんに、雑誌づくりのお話を
伺って帰りました。
その高野さんと、先日パレットクラブ『二人展』のレセプションで再会しました。
「弥生美術館での回顧展のときに、森本さんの作品が掲載された本を贈呈したのですが、
展示されなかったとのことで学芸員の方が返却してくださいました。
これは保存会にお渡しした方がよいと思い、今日、お会いできるのではないかと思って
持参しました。これで今日の大きな目的が果たせました」
そうおっしゃって渡してくださったのが、ここに掲載した『暮しの手帖2006 6・7月号』です。
この号では、目次カットのほかに、巻頭で森本さんのイラストが8ページに渡って
掲載されています。
タイトルは「あなたの旅をお手伝い」。タイトルカットのほかに、旅先で重宝する
カーディガンの着こなしを7パターンのイラストで紹介しています。
嬉しかった。本当に。。。
『暮しの手帖』の根底にあるのは、こういう気遣いや心配りなのだと実感しました。
この号の販売は終了してしまいましたが、「雑誌を読み捨てにしない」がモットーの
『暮しの手帖』、入手可能なバックナンバーもたくさんあります。
最新刊はもちろんですが、心に留まる内容がありましたら、ぜひ購入をお薦めします。
*『暮しの手帖』バックナンバー
https://www.kurashi-no-techo.co.jp/list/honshi