観られなかった方のために、4月のショーの様子を写真を交えてご紹介いたします。
ちょっと長いですが、おつき合いくださいね。
私が「モノセックス」を提唱してもう二十年以上になる。
当時はフェミニズムもアンドロジニーもまだ言われなかったころだ。
私は「女らしさ」と「男らしさ」に疑問をはさみ、男と女の違いよりは、
人は個人差が大きいのだからと、人間の着る服にも男女の差は無用と、
字引きにもないモノセックスなんて新造語をでっち上げたわけ…。
長沢節著『弱いから、好き』より
長沢節プロデュースの「モノ・セックス・モード・ショウ」は1964年10月末、
ワシントン靴店銀座本店のオープニング・イベントとして開催されました。
6階建てで大きなエレベーターを配した店舗は当時としては珍しく、鳴り物入りで
オープンしたのだそうです。ワシントン靴店の担当者がセツ好みのいい男だったため、
セツ先生、ホイホイ引き受けてしまったのだとかw。
第一回は靴だけのショーでしたが、1967年に開催された第二回では、靴に合わせて
衣裳も誂えました。靴はセツ先生、衣裳は浅賀政男先生によるデザイン。
今回の「モノ・セックス・モード・ショウ」では、第二回に使われた衣裳と靴をセツの
モデルが着て、当時のショーを忠実に再現しています。
*今回のショーに出演した「ホモ・ジュッピース」

「ホモ・ジュッピース」とはモノ・セックス・モード・ショウの出演モデルたちの呼び名です。
セツ先生の造語で、フランス語の「ジュップ(スカート)」と「ヒッピー」をかけたもの。
当初のホモ・ジュッピースには、今や日本を代表する有名デザイナーやイラストレーターも!
1970年におこなわれたショーではステージの合間にモデル達が銀座の街を闊歩し、人々の度肝を
抜きました。
そして、…あっという間に警官に捕まってしまったそうですw。
「細くて弱いものこそ知的で美しい」というセツ先生の美学に則り、モデル達はみな、
実にスリムな体型です。また、このショーは2004年に弥生美術館でも開催されるなど、
過去に何度も繰り返し開催されてきましたが、「洋服に男女の差など必要ない」という
理念から、前回男性が着た衣裳を今回は女性が、ということもよくありました。
ここからは、森本美由紀のクロッキーモデル、ニッキーさんが着た衣裳を説明します。
*トラッドな印象のシャツ×ミニスカート


ショーのオープニングで登場。
一見ワンピースのようですが、シャツとスカートに分かれていて、シャツは裾に3カ所
ボタンがあり、股の部分で留めるようになっています。
ワイシャツのルーツを辿ると、元はパンツを兼ねた下着。現在でもボディシャツがその
名残と言われていますが、ボタンを留めることで裾が浮かず、きれに着ることができます。
大腿部まで届くロングブーツは60年代後半、ミニスカートの流行とともに登場した
デザイン。後ろがやや短く、ファスナーがついています。履く度に膝の部分の細いベルトを
留めなければならず、着脱はちょっとタイヘンみたいです。
*カジュアルなプルオーバー


裾と袖がゆったりとしたAラインのプルオーバー。大きなセーラーカラーが印象的です。
キャンパス地に近いような厚手のコットン素材で、七分丈の細身のパンツに合わせています。
靴はつま先をカットしたスクエアトゥ。
そういえば、ショーに登場した靴は、すべてスクエアトゥでした。
セツ先生の大好きなくるぶしが見え隠れするデザインで、ソールはコルクでできています。
*ニット・ワンピース


軽やかな印象ですが、着るとずっしりとくるニットのワンピース。
大きめの金ボタンがアクセントになっています。
同素材のタイツ風レッグウォーマーにはスティラップ(足かけ)がついていて、
かかとに引っ掛けて履きます。
主役はあくまでも靴で、靴を見せるための洋服ということなので、黄色いサンダルに
ニットの色を合わせたのかもしれません。
*ロングドレス風ワンピース

最後は薄手のワンピースドレス。麻素材なのか、美しい光沢があります。
サイドはファスナーで開閉し、上から被って着用。
最近人気のローウエストに切り替えのあるワンピースも、60年代にはあまり見なかった
デザインかもしれません。フェミニンな着こなしが素敵ですが、こちらもセーラーカラー
なので、男性が着るとイメージがガラリと変わりそうです。
靴は黒紐のレースアップサンダルで、親指と人差し指の間にシルバーのデザイン金具の
ようなものがあり、そこに指を引っかけて履いています。
いかがでしたか?
少しでも雰囲気が伝わったらよいのですが…。
弥生美術館では60年代の「モノ・セックス・モード・ショウ」のパネルや、
一部衣裳と靴も展示しています。
6月分に間に合わなかった方も、ぜひ足を運んでいただけると嬉しいです。
http://www.yayoi-yumeji-museum.jp/yayoi/exhibition/now.html